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[IMPACTインタービュー] 竹中平蔵さん(前編) 『社会が発展するための原動力、それがアントレプレナー』

2016/06/28 | By IMPACT Japan

takenaka
IMPACT Interview: 竹中平蔵さん(前編)
『社会が発展するための原動力、それがアントレプレナー』

日本全国そして世界を舞台に活躍するアントレプレナーを紹介し、その成功のメソッドを解き明かす今企画。連載第2回となる今回は、小泉元総理の在任時に経済財政政策担当大臣など様々な大臣職を歴任し、政治・経済の構造改革を推し進めた、現代日本を代表するアントレプレナーである竹中平蔵さんにご登場いただいた。
アントレプレナーとは何か。なぜ日本にはアントレプレナーが生まれないのか。見解をうかがう。
 
<プロフィール>
竹中平蔵(たけなかへいぞう)
1951年生、和歌山県出身。2016年4月より東洋大学教授、慶応大学名誉教授に就任。小泉政権では経済財政政策担当大臣、郵政民営化担当大臣などを1980日にわたり歴任し、国務大臣としての在任期間は戦後の連続最長を記録した。政界引退を表明した後は、産業競争力会議の有識者委員や、国家戦略特別区域諮問会議の有識者議員といった政府系の仕事や、(株)パソナグループの取締役会長、六本木アカデミーヒルズの理事長、オリックス(株)社外取締役といった民間の役職にも精力的に携わり、産業の発展や人材の育成に尽力している。
 
<インタビュアー>
齋藤ウィリアム浩幸(さいとうウィリアムひろゆき)
1971年生、カリフォルニア出身の日系二世。内閣府本府参与。自身も20代で米マイクロソフト社に事業売却を果たしたアントレプレナーであるが、現在は次世代リーダー育成をテーマに活動しており一般社団法人IMPACT Foundation Japanを設立、代表理事を務める。
IMPACT Japan Foundationは、カタールフレンド基金による活動の拠点としてINTILAQ東北イノベーションセンターを企画・運営している。
 
 
アントレプレナーとは、社会が発展していく原動力そのもののこと
 
 
 - 齋藤ウィリアム浩幸(以下、ウィリアム)
竹中さんは、ご自身が、政府という非常に大きな組織の中で経済政策の改革に尽力なさったアントレプレナーです。そんな竹中さんだからこそ、ぜひ伺いたいのは、アントレプレナーとは何か、という言葉の定義です。
 
 - 竹中平蔵(以下、竹中)
私は一学者に過ぎないですが…真のアントレプレナーとは、世の中に非連続な変化をもたらす人のこと。社会の発展の原動力そのものであると、捉えています。
私も65歳になった今だから思うけど、人生は本当に短い。同じ年齢で、すでに仕事をリタイヤした人もいるし、亡くなった方もいます。長い歴史の中においては、1人の人間が生きられる時間なんてたかが知れているのだから、どうせなら若い人はもっと、非連続な変化を意識して欲しいという風に思います。
 
 - ウィリアム
いや…竹中さんはまだまだお若いです、頑張っていただかないと!
 
 - 竹中
これからまだまだ10年20年、健康年齢が伸びるように自己管理をしないとね。シュワブ(世界経済フォーラムの創始者・1938年生)は海外出張を減らすんだそうですよ。斎藤さんくらいの、40代になってからの10年くらいは、本当におもしろいと思いますよ。
 
 - ウィリアム
若いと言える年齢は、今後もますます上がっていくでしょうね。リタイヤした、とご自身では思っている方にこそ、まだまだアントレプレナーシップを持って頑張っていただきたいですね。
さて、いきなり話が逸れてしまいましたが本題に戻りまして、アントレプレナーシップの定義とした「非連続な変化」とは一体どういうことでしょうか。
 

夢と勇気とサムマネー、
それさえあれば、イノベーションは誰にでも実現できる

– 竹中
社会をもっと良くするために必要なことは何か、という議論はかなり昔からいろんなところでされています。イノベーションの重要性を世の中に説いたのは、20世紀を代表する経済学者シュンペーターです。しかし彼は初期の著書では、イノベーションという言葉を使っていませんでした。代替される言葉は「新結合」です。社会に新しい結びつきを生み出すことが、大きな変革につながる。それが、資本主義の成長のダイナミズムの根源だと言ったのです。

– ウィリアム
アントレプレナーという言葉を前にすると、特別な人にしかできないことをする、という意味に誤解して行動をためらう人が非常に多いように思いますが、人と人の結びつきと言い換えるなら、身近な行動から何かを変えようと考えられるかもしれませんね。

– 竹中
天からものすごく天才的な閃きが降りてくるという人もいないとは言えないけれども、実際に世界を大きく変えたイノベーションは、いろんな人、企業のアイディアを組み合わせた例が多いのです。
たとえば産業革命の中心となったワットの蒸気機関も、蒸気を生むという化学の力と、蒸気を圧力によって閉じ込める大砲の技術を組み合わせて創造されました。スマートフォンも、通信とデジタルという異なる技術を繋ぎ合わせた成果です。
ただ、馬車を何台繋いでも、自動車にはなりません。役割の異なる何と何を組み合わせるか。それこそが、まさに非連続な変化を生む、という発想です。

– ウィリアム
しかし日本ではなかなか、組織の外と繋がり協調する、という事例が増えませんね。同質性の中からはみ出すと、すぐに叩かれてしまうと恐れているように感じます。

– 竹中
日本では他人と違うことをするとすぐ村八分にされるような空気がありますね。他人と違うレールを歩くには相当な勇気が必要です。ですから、ここで小泉元総理が国会で何度か使った言葉を紹介してみたいと思います。それは、「夢と勇気とサムマネー」。これ、もともとはチャップリンの言葉なんですけどね。夢を持て。そして最初の一歩を踏み出す勇気を持て。それから少々お金も必要だということ。ビッグマネーがあるに越したことはないけど、必ずしもビッグマネーでなくても良い。でも、ノーマネーじゃダメなんですね。

若者が許容できないリスクを引き受ける、
資本家の健全な投資があってこそ、社会にアントレプレナーが生まれる

– 竹中
シュンペーターは、イノベーションを実現するためにはフィナンシエー(金融家)が大事だと言いました。
たとえば若者2人がガレージの中で良いアイディアを思いついたとします。しかし若者たちにはそのアイディアを実行に移すお金がありません。誰が彼らを支えるか。それがフィナンシエーの役割で、イノベーションを実現していくプロセスには不可欠なピースなんです。

– ウィリアム
アメリカではエンジェル投資家がベンチャーを助けた例は数え切れませんが、日本ではまだまだそういったリスクを引き受ける団体、個人が少ないですね。お金を貸すということは、若者が引き受けることのできないリスクを肩代わりすることと同義のはずなのですが、どうも金貸しの印象が悪い。

– 竹中
金融家の働きを社会がもっともっと大事にしないとダメですね。お金を出しただけで何倍もの利益を手にするのはケシカラン、濡れ手に泡じゃないか。みたいな認識は変えていかないとですよね。
もうひとつ、シュンペーターの名言には、資本主義は成功の故に失敗する、というものがあります。最初は勢いがあり、成功が積み重ねられていく。しかし、成功の結果、組織が大きくなればなるほど組織は硬直化して、非連続な変化を求めない集団になってしまう。この言葉がもう、見事に日本には当てはまっているわけですよね。
ドイツ統一の中心人物だったビスマルクは、愚者は経験に学び賢者は歴史に学ぶと言いました。狭い範囲での成功体験を後からなぞっても同じ成功が得られるとは限らない。重要なのは、なぜ過去の例では成功したのか、エビデンスを考え続ける謙虚な姿勢です。

(竹中平蔵さんインタビュー第2回へ続く… 近日公開)

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